抗HIV療法では、その開始を決定したら、強力なHAARTによって、血中ウイルス量をできる限り長期に検出限界以下に抑え続けることが目標となる。この目標は、患者が規則正しい服薬を続けることによってはじめて達成することができる。
  抗HIV療法の決め手となるのはすなわち、服薬アドヒアランスであるといっても過言ではない。
  HIV感染者では、自覚症状がないため、治療による症状改善もあまりみられない、にもかかわらず副作用だけが現れることも多い。感染の事実を知らない人の前で服薬しにくい、経済的負担が大きい、定期通院がしにくいといった問題もある。そのため、服薬を続ける意志を維持するのが難しい。
  定期的な服薬の維持ができなければ、治療効果が落ちるだけでなく、薬剤耐性ウイルスの出現を招き、交叉耐性により将来の治療の選択肢を減らすことにもなりかねない。
  患者が積極的に治療方針の決定に参加し、自らの意志で服薬を続ける現在の抗HIV療法では、アドヒアランスの維持こそ、治療成功の鍵といって良い(表14)。


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同じ「服薬遵守」を意味する用語でも、従来用いられてきた“コンプライアンス”には、患者が医療提供者の決定に従って服薬するとの印象がある。これに対し、“アドヒアランス”は、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、自らの決定に従って治療を実行(服薬)し、それを続けていく姿勢を重視した用語であるとする考えがある。



表14 アドヒアランスの維持
1. 処方に関して
予想される副作用と対処をあらかじめ説明し、副作用が出現した場合は適切に対処する
服薬と食事の条件を単純なものにする(例えば食前や食後がまちまちでないようにする)
薬物相互作用に注意する
可能であれば、服薬回数、錠数の少ない処方にする

2. 患者に対して
患者が理解し、受け入れられる服薬計画をたてる
治療の意義・目標とアドヒアランスの重要性を説明し理解してもらう
最初の処方箋を書く前に、患者が服薬のできる環境を整える時間を設ける
家族や友人の支援を求める
患者の食事時間、日々のスケジュール、副作用に合わせた処方を作成する

3. 医療者に関して
患者との信頼関係を確立する
患者にとって良い相談相手、教育者、情報源となり、継続的な援助と観察を行う
医療者が休暇中などにも患者の問題に対して対応できるよう連絡体制を整える
アドヒアランスの状況を観察し、維持が困難な場合は、来院回数を増やす、家族・友人の支援を求める、医療者チームの中の専門職を紹介するなどの対策をとる
新たな疾患(うつ状態、肝臓病、衰弱、薬物依存など)が出現した場合にアドヒアランスへの影響を考慮し、対処する
医師、看護師、薬剤師、カウンセラー、ソーシャルワーカーなどがチームとなり、アドヒアランスを維持するための対策を考え、互いに患者と密接に連絡を取りながら支援を行う


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